うさぎはメスは避妊手術をした方が良いと言われますが、絶対にしないといけないのでしょうか。
生殖器の病気にかかる可能性は本当に80%以上?、手術により死亡する可能性は0に出来ないの?心配だからこそ実際の数字と信憑性が知りたいですよね。
うさぎの避妊手術に関する情報は色々な情報がブログなどで飛び交っていて紛らわしいので、色々な情報を整理してまとめました。
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避妊手術のメリットは?
うさぎのメスに避妊手術は必須と言われますがなぜ必要なのでしょうか。主な理由は3つになります。
- 生殖器の病気を防げる
- 性格が穏やかになる
- 望まない繁殖を防げる
これらが避妊手術のメリットと言われますが、それぞれ細かく見ていきたいと思います。
生殖器の病気を防げる
うさぎのメスに避妊手術が必要と言われる最大の理由が、避妊手術をしていない高齢のうさぎは生殖器の病気にかかる確率が80%以上と非常に高いことがあげられます。
若い体力のあるうちに避妊手術をすることで手術のリスクを抑え、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、子宮ガンなどの卵巣・子宮系統の病気を予防することが出来るからです。
病気の発症率は1959年の論文を元にされていると思われますが、データの取り方に偏りがあり、現在の飼育環境下ではまた違ったデータになってくる可能性もあります。
この項に関しては気になる方も多いと思いますので、論文以外にもデータを公開してくれているホームページなど、「避妊手術しないと本当に危険?」にまとめました。
性格が穏やかになる
実際には妊娠していないのに巣作りのために自分の毛をむしる偽妊娠を行わなくなります。
偽妊娠中のうさぎは神経質になるため、抱っこやグルーミングを嫌がったり、飼い主を噛むなど攻撃的な行動を取ることを少なくありませんが、本能的な行動のため躾けることは出来ません。
元々メスのうさぎはケージ内での縄張り意識が強く、ケージの外に出るのを嫌がるなど世話が大変だったりしますが、それも改善できる可能性があります。
個体差があり、必ず治るわけでも性格が大人しくなるわけでもないため、そのためだけに避妊手術をするということ避けた方が良いですが、考える一つの理由にはなると思います。
望まない繁殖を防げる
うさぎのメスは生後3ヶ月くらいから生殖機能が備わってきます。
特別な性周期はなく、オスを惹きつける行動がより強い日と弱い日が4〜6間隔であるだけで、基本的に求愛と交尾があれば年中受胎できてしまいます。
一度の出産で4〜10匹の子供が生まれてしまうため、望んでいない場合は大変です。ほとんどの家庭では一度にそれだけの頭数を飼育出来ないでしょう。
交尾自体は30秒程度で終わってしまうため、自宅のオスが去勢済みでもカフェやうさんぽ中も注意が必要です。多頭飼いしていなくても繁殖する可能性は充分あります。
避妊手術のデメリットは?
避妊手術をする上ではデメリットも主に3つになってきます。
- 繁殖出来なくなる
- 手術が必ず成功するわけではない
- 肥満になる可能性がある
避妊手術を納得して決断するためにもしっかりとデメリットも理解しておきましょう。
繁殖出来なくなる
一度避妊手術すると戻すことは出来ませんので、自分の子の血を残したい、赤ちゃんうさぎも飼育したいという人は避妊手術が出来ません。
ただし、仔うさぎは体調を崩しやすく、繁殖した子同士が交尾をしてしまうと大変なため避妊・去勢手術も必要とし、体力的にも金銭的にも大変です。
オスの場合も5ヶ月程度で生殖機能が備わってくることから親子での交尾もあり得るため、一度繁殖した後は避妊手術を行うことがほとんどでしょう。
想像以上に爆発的に増えてしまう繁殖力をもつため、無責任なことにならないようにしっかりと計画を立てて繁殖するようにしましょう。
手術が必ず成功するわけではない
一番避妊手術を迷ってしまう理由が死亡のリスクがある点では無いでしょうか。メスの場合はオスの去勢と違い開腹手術となるため、オスに比べると体力を使う手術となります。
麻酔自体も犬猫で使う気管チューブが使えずマスクでの吸引となるため、実際の吸引量などをうさぎの状態を見て判断しないといけない点で、犬猫よりハードルは上がります。
どんなに腕の良い技術のある先生でも、医学に絶対は無いため死亡リスクを0にすることは出来ません。
実際、得られるメリットに対して、成功率や死亡のリスクはどうなのか、「避妊手術の成功率と死亡リスクは?」で詳しくまとめました。
肥満になる可能性がある
避妊手術をするとホルモンバランスが崩れ、肥満になりやすくなります。生殖に向けていたエネルギーが食に向くため、食べ過ぎる可能性も出てきます。
牧草メインでしっかりと食事の管理をしてあげればそれほど心配ないものではありますが、ケージの外でしっかり運動させてあげるなど、注意しましょう。
避妊手術しないと本当に危険?
避妊手術の失敗の可能性が0ではない以上、避妊手術をしないという選択肢は取れないのでしょうか。
生殖器の病気になる可能性についても、本当に80%以上あるのかなど、数字に納得して決断できるようデータを公開しているホームページを集めてまとめました。
80%以上と言われる所以
避妊手術をしないと生殖器の病気になる可能性が高いことは、Greeneの論文ADENOCARCINOMA OF THE UTERINE FUNDUS IN THE RABBITが元になっていると思われます。
「2〜3歳のウサギの491匹のうち21匹(4.2%)で腫瘍が見つかった。5〜6歳については24匹のうち19匹(79.1%)で腫瘍の見つかった」と書かれている所が出所でしょう。
確かにメスうさぎは高齢になると子宮系の病気にかかりやすいようですが、5〜6歳の検証数を見ると80%という数字には前後がありそうではあります。
また、1959年の論文ということで、飼育環境が今とは大きく異なる点も注意しないといけないかと思います。
詳しい論文の内容や数字に関する考察はThe Garden of Ethelというホームページで詳しく解説されていらっしゃいましたので、興味のある方は見て見ると良いかと思います。
避妊手術していない子を見てきた病院
くらた動物病院のホームページでも、ある期間3〜6歳のうさぎを避妊手術すると90%以上の子に子宮・卵巣系の疾患が見つかったことが報告されています。
また、全てのうさぎが外見上は健康そうに見えていたということで、うちの子は避妊していないけど大丈夫という場合も注意が必要だということがわかります。
2004年に開業されており、2014年の更新で記載されていらっしゃるので、今の飼育環境に近い状態で得られたデータだとは思います。
ただし、どれくらいの件数をどれだけの期間で検証されたのかは分からないので、パーセンテージに関してはどれだけ確かな数字なのかは分かりません。
避妊手術の重要性も記載されているので興味のある方、近くで避妊を検討されている方はくらた動物病院のホームページもご覧になってください。
避妊手術への反対意見
pet’s-clubといううさぎ専門店を運営されており、ブリーダーでもある方が反対派ではありませんが、血統と発情度合いによっては賛成派ということでブログに記事をあげていらっしゃいます。
元々、避妊手術には反対派の方だったようで、ご自身で育てられた子や販売した子に避妊手術をした子はいなかったとのことですが、子宮卵巣系の疾患になったうさぎは、3%にも達さないとのこと。
また、病気になったうさぎの傾向として発情が激しい子、乳腺炎を起こしたことがある子、偽妊娠の経験がある子は危険性が高いということも公開されています。
どれだけの件数に対して3%なのか、販売された子はどこまで把握されているのか、血統に関するばらつきはどれだけあるのか等は分かりませんが、血統によってはなりにくい血筋の子などもいるのかもしれません。
ブリーダーは避妊手術に反対の方も多く、上記以外の詳しい情報も載っているので興味のある方はうさログを見てみると良いかもしれません。
避妊手術の成功率と死亡リスクは?
避妊手術は全身麻酔を行いますが、うさぎの場合は麻酔の難易度が犬猫に比べて高くなり、失敗する率は0.5パーセント、つまり成功率は99.5パーセントです。
通常であれば麻酔は気管にチューブを通して行いますが、うさぎの場合気管が細くて、このチューブを通すのは難しくなるため、人間に使うようなマスクをつけて行います。
マスクでは全ての麻酔を吸っているとは限らず、かと言って多すぎても良くないので少しずつ効いているかどうか確かめながら行い、手術中の調整も大変になります。
ただし、麻酔のやり方にさえ慣れていれば難しい手術ではなく、元気な個体であればまず失敗はしないようです。
とはいえ、「まず」とつくように医療において絶対は無く、歳をとるごとに子宮に肉がつく事と体力的にも難易度としても死亡するリスクが上がっていきます。
避妊手術にかかる費用は?
避妊手術をした場合にかかる費用は病院ごとに異なりますが、大体20,000〜50,000円が相場になります。
動物病院の金額は病院ごとで設定できるため価格差がありますが、値段が高いから良い、低いから悪いというものではありません。
獣医師の方に聞きづらいかもしれませんが、今までの実績を確認して、わからないことや不安なことは全て確認しましょう。
また、ペット保険に加入していても避妊手術は健康な状態で受けるので料金に保険が聞かないことに注意が必要です。
避妊手術に適した年齢と時期は?
避妊手術にはいつからいつまでに受けた方が良いというオススメの期間があり、基本的には6ヶ月〜1歳の間に受けた方が良いと言われています。
年齢が1歳を超えてくると腹腔内に脂肪がたまりやすくなり、子宮や卵巣を探しにくく、摘出しにくくなるため手術時間が伸びてしまいます。
2〜3歳でも受けることは出来ますが、手術時間が伸びて通常より体力を使うことは頭に入れておく必要があります。
時期としては梅雨のジメジメした時期や、夏の暑い時期は体調を崩しやすく体力も落ちているので避けた方が良いでしょう。
避妊手術の流れと術後は?
避妊手術の予約を行えば、手術の数日前、もしくは当日に手術を受けても問題ないか身体検査や血液検査があります。
飼い主さん自身も手術の前日から当日に、餌を食べた量や水を摂取した量、糞の状態はどうか確認し、少しでも気になることがあれば獣医師に相談しておいた方が良いでしょう。
避妊手術の仕方としては、全身麻酔して、下腹部の真ん中を4〜6㎝切開し、二つの卵巣とそれにつながっている細長い子宮を切除します。腹膜が脆いため閉じるときには丁寧な縫い合わせが必要となります。
うさぎはストレスに弱く、知らない環境だと餌を食べない可能性があることと、犬猫の鳴き声で怯えないために入院をさせない日帰り手術の病院が多いようですが、検査結果や病院の設備、うさぎの状態によっては入院することもあります。
避妊手術後は食欲が落ちていないかや傷口を舐めて開いてしまっていないかに注意しながら、処方された抗生物質や胃腸薬を与えることになります。水を飲まない、動かないことが多く、うっ滞を起こさないよう強制給餌をしないといけない場合もあります。
1週間程度で抜糸と術後の経過を見てもらうために病院に行き、問題なく回復しているようであれば完了となりますが、気になったことがあればそれまでに電話などで相談するようにしましょう。